闇夜に咲いたハイビスカス

給料日に妻からわずかな小遣いをもらい、それを握りしめてホールに向かう人は多いはず。
ボーナス後ならその握力は何倍にも増している。

私もそうでした。年末ボーナス後の最初の週末、私は妻から貰った5万円をレスラー級の握力で握りしめホールに向かいました。

とは言え、5万円全てを使うきは最初から無いのです。クリスマスには妻と子供にサプライズでプレゼントをしよう。
正月になれば親戚の子にも久々に会う。あそこの両親は厳しいけど、内緒でお年玉をあげよう、などと楽しい想像もしていました。

そして、もしも、万が一今日勝つようなことがあれば、その楽しい想像は何倍にもなって現実になる、などとわくわく考えていました。

ホールに入ると、独特の薄暗がりに紫煙の香が漂っています。その狂気まじりの空気に心が急かされるのを感じながら、まずはぐっとこらえて店内を一周。

ビッグ率は6を抜けてるがバケは1以下のジャグ。。。いや、これじゃねえ。

回転数300ちょいのハーデス。。。犬がワンワン吠えるのが目に浮かぶ。これじゃねえ。

大好きな黄門もオーラを感じない、絆は満席、リオは4号機の大負けが頭をよぎる。
そのとき、キレイな華が視界を横切りました。

とてもキレイなハイビスカスの花でした。孤高の冬に凜と咲く、二つの真っ赤な花です。

細かな回転数は分からいが、100回転超スルーを3回し現在150回転。これだろう。沖ドキは詳しくないが、3回スルーは理論値プラス、と聞いたことがある。

下皿に煙草を投げ入れるとスマホでググってみる。間違いない。3回スルーは打つべし。右手には美尻の女性が立っている。

最近の派手な台に慣れてしまうと少し味気ない気もするが、絶対に一度も取りこぼさないという使命を自らに課し打ち進める。

1000円で約20回転、あまり回らないことをすぐに実感し思わず天井までを計算し一瞬、顔が青くなる。天井まで4万円超だ。

手持ちは5万円。或いは早々に引くべきか。。。と思ったら、咲きました。キレイな花が。真っ赤な花が。投資3000円。

ビッグは1G連なしで無事消化。勝負はここから32G以内。慎重に打ち進める。優しく、花を育てるように、優しく、優しく。そう、優しく、優しく。

。。。光らない。花が咲かない。

ここからは途端に記憶が曖昧である。スルー回数が増すごとに期待値は増し、財布は軽くなる。

この「スルー回数が増すごとに期待値が増す」というのがギャンブラーのココロを鷲?みにし、どうやっても振りほどくことが出来ない。

次、光りさえすれば、花が咲きさえすれば、そう呟きながら闇夜のハイビスカスを見つめていた。死にそうな顔で。
気が付けば財布に札はなし。一枚も。諭吉だけではなく、格下の札さえない。

私の5万円を吸収してもなお、闇夜のハイビスカスが咲き乱れることはなかった。私の、家族の楽しいクリスマスを吸収しても、ハイビスカスは咲くことなく、闇夜に静かにたたずんでいた。

この後、お金を借り入れに行ったのは言うまでもない。。。